FET差動アンプを使ったPower Amplifire の製作(4)

ここのところ忙しくしておりましたので、少し間があいてしまいました。
先日よりプリント基板の作成に入っています。
現状では、電源部とラウドネス回路はそのまま引き継ぎ、オペアンプ使用のバッファーアンプ部は定数を1箇所変更、エミッタフォロア+MOS-FETパワーアンプ部については新規作成ということになります。
何故か、いつも使用している Core i5Windows 10 からEPSONのEP-706Aが認識できなくなってしまい、仕方なくノートの Core i7 機で読み込ませた上でパターン図を印刷しました。
その結果が、この画像です。
所々でパターンに切り欠きが生じていますが、フットプリントのリファレンスを印字させようとした痕跡です。
何故か文字情報が欠落してしまいました。
また、忌諱ですが、バージョンでの問題かと思いましたので、バージョンアップしてみましたが変わりませんでした。
しょんぼりです。
大きさは、100mm×150mmの市販基板にステレオ分を乗せています。
よって、1ch分としては100mm×75mmとなります。
オーディオ回路としては、かなりの実装密度となります。

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オーディオの大家に方には、相当怒られそうですね。

FET差動アンプを使ったPower Amplifire の製作(3)

このアンプでは、Loudness補正を行うことが出来ます。
特に安価なアンプではラウドネスコントロールが付加されていますが、通常はオンーオフのみで回路的には音量調節用可変抵抗器(VR)の中点を利用しています。
この回路では、これをVRの位置とは関係なく補正できるようにしました。
また必然的に入力インピーダンスが下がりますので、バッファとしてオペアンプOPA2604で受けています。
このOPA2604によるバッファは、出力電流の増強を行っています。
また、帰還回路と入力にコンデンサを挿入し、ACアンプ構成にしています。
これは前段に直流を出力しないアンプがないことを想定してのことです。
斯様なことは、現代ではまず考えられ難いとは思いますが、多くのアンプでは出力コンデンサを有していないものが多く、オフセットやドリフトが生じていることも考えられます。
よって、疑うことも重要と考え、挿入することにしました。

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パワーアンプ本体の回路です。
未だ未検証のため、細部の定数が変更になる可能性もあります。
初段にFETを使い、2段目にもトランジスタによる差動増幅回路を採用しています。
このような使い方は、近代アンプでは常套的な方法で、特別なものではありません。
殊更に「FET式」などと謳う必要もありません。
DCアンプ構成とするなら、初段には必然的にFETを採用することになります。
初段FET差動回路には定電流回路を採用しています。
2段目もトランジスタによる差動増幅回路を採用しています。
通常はこの2段目の片方から出力を取り出す「アンバランス」型となります。
本機では、両方から出力を取り出す「バランス」型とし、出力のMOS-FETによるBTL接続を構成しています。
この回路は、先にも述べたように無線と実験誌での作例とネット上における作例の各々1例があるだけです。
文献を探してみると、テキサスインスツルメンツ社のアプリケーションノートに「完全差動回路」として紹介されていました。
但し、テキサスの文献では、自社のICに関する情報が主体であり、完全差動型の具体的な回路例までは示されていません。

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今回は通常のパワーアンプ回路の延長線上と考えて設計しました。
特徴は、NFBの掛け方にもあります。
出力は2系統あるわけですが、片方は通常のNFBと同様です。
もう一方は、信号入力側に掛けています。
このまま同一値でNFBを掛けると、増幅率に差異が生じてしまいます。
何故なら、正側の利得はAv=(1+(18k / 1k))となりますが、もう一方はAv=(18k / 910)で計算されるからです。
つまり「1」の分を補正しなくてはならないのです。
そこで、入力抵抗910Ωが意味が出てきます。
すると、ここで困った問題が生じてしまいました。
今度は前段VRの合成抵抗が低くなってしまいます。
そこで、パワーアンプ本体の前段に定電流回路+ブートストラップが付いたエミッタフォロアを付加することにしました。
このエミッタフォロアは、黒田氏のものを基礎として手持ちのトランジスタと電源電圧に合わせた仕様にしています。
以上がアンプ本体の回路となります。

以下、製作篇につづく

FET差動アンプを使ったPower Amplifire の製作(2)

今回は、電源部です。
LM3886を使ったパワーアンプ(実体はプリメイン)で使ったものを、そのまま活用します。

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電源部

電源トランスには、24V-3Aのものを2個、用意します。
当初、ここには特注のRコアを使用するべく入手しましたが、次回作で使用することにしました。
今回は、シンセ用にと用意したものを使います。
随所に使用しているオーディオ用ケミコンは、在庫のものを消化するためで、普通品でも全く問題ありません。
オペアンプ用に±15v、パワーアンプ用に2系統の±33vを用意します。

ここで、整流用ブリッジダイオードを直列に複数個接続していますが、これは突入電流の防止のためです。

つづく

FET差動アンプを使ったPower Amplifire の製作(1)

5年以上前に製作したLM3886パワーアンプを引っ張り出してみました。
片チャンネルの音が出ません。
アナログモジュラーシンセを製作する直前に製作したもので、中途で製作放棄したものでした。
気になっていたこともあり、今回、改めて製作することにしました。
諸種問題もありますがLM3886を交換するし多少の定数の変更で完成するはずですが、それだけでは面白味もありません。
そこで今回は、40年近く前に構想していたアンプを実現することにしました。

このアンプでは、気持ち良く音楽を聴くことを念頭に置いています。
付属の回路として、6点の補正ができるラウドネスコントロールを装備しています。
パワーアンプの回路の前には、ブートストラップ付きエミッタフォロアを置いています。
パワーアンプは、µPA63Hを初段に使用したFET式(笑)で、2段増幅の後、バイアス回路を経てMOS-FETによる終段に入ります。
パワーアンプ本体は、DCアンプですから初段はFETとなります。
2段目は、バイポーラトランジスタよる差動増幅回路としました。
通常はこの出力にバイアス回路が付き、その後ドライバー段を経て出力トランジスタに入りますが、今回はドライバー段と温度補償が必要のないMOS-FETを使用します。
また、2段目の差動増幅回路は通常、アンバランスで動作します(片方の出力は使用しない)。
しかし、本機では2段目の差動増幅回路もバランスで動作させ、出力段を二組持つBTL接続を構成しています。
このような構成のアンプの発表例は、インターネット関連で1例、雑誌における製作記事でも1例しか見当たりませんでした。

以下、続く。

Digital Delayの製作

Phase Shifter の製作の後に製作したものです。
ディジタル式のディレイで、主要素子に三菱のM51095を使用しています。

製作途中で致命的なエラーを起こしてしまいました。
きちんと採寸したつもりでしたが、M50195の寸法を間違ってしまいました。
よって、プリント基板を再度、製作することになってしまいました。
回路は、ほぼデータブックの通りです。
外部からクロックの変調を行うこともできます。

パネルデザインも、特に凝ったところはありません。
しかし、Phase Shifter の変調のレベルと周波数可変のVRの位置が入れ替わってしまい、この点が失敗した部分です。
ディレイタイムのポジション指示LEDは、あった方が良いというアドバイスを頂きましたので、それに従っています。

Fixed Filter Bank の製作

アナログ・シンセサイザー・ビルダーズ・サミットに参加した直後に製作したのが、このFixed Filter Bankです。
当初、グラフィック・イコライザ用ICを使って、同等のものができないか模索していました。
しかし、無理があるということから断念し、moogと同等の回路を製作することにしました。
moogのモジュラーシステムでは、コイルとコンデンサを使って実現しています。
そのコイルのインダクタンスは、最大で5Hであり、非常に大きなものになります。
また、そのまま作ったのでは、面白味もありません。
そこで一部をオペアンプに置き換え、更に恐らく各フィルターの中心周波数にも影響を与えるであろうバッファーアンプと各フィルターの間にあるVRの位置をフィルターの後に変えるなどの変更を加えています。


これが回路図です。
バッファーアンプの後にハイパス/バンドパス/ローパスフィルタを通った後に、レベルを確定するVRを経て、出力バッファーへと送られるという構成になっています。
バンドパスフィルターは、2次フィルタを2段シリーズに接続した-24dBのものです。



実装は例によって、KiCADと感光基板を使用した手作りプリント基板ですが、思ったよりも部品数が多く、密度が上がってしまいました。
なお、このFixed Filter Bankは、初めてプリント基板を2枚使用したモジュールになっています。
製作を終え、データを取ってみると、低域(Low Pass)に意図しない特性が出てしまいました。
原因を突き止めることになりますが、ここで腎臓結石による1度目の入院・手術ということになり、一時中断になってしまいます。
しかし、気になり、病室にまで回路図を持ち込んで検討した結果、一部に定数の不適切な箇所が見つかります。
退院後、即座に修正しました。



その結果得られた特性の一部です。
Low Pass / High Pass 共にピークを生じていますが、アッテネートして使用するものでもあることから、これでFixとしました。

作業中、お腹が痛かった記憶だけが残っています。

Voltage Controlled Phase Shifter(その3)

トラブルシュート

何度も周波数レスポンスを測定しました。
その測定結果は芳しいものではありません。

そこで、退院後、すぐに着手したのが、「C/2」の件でした。
これは、山下氏より定数を求める式が違っているという旨の指摘が発端でした。
そこでR及びCに着目しかけた頃、ネットを通じてある方が固定周波数の設計例を掲示していただいたので拝見したところ、「C/2」ではなく「2C」ではないかという疑念を持ったのです。
全てを「2C」= 0.1uF として考え、換装しました。

測定すると、大きなピークを見ることができます。
定数をまた見直すと、特に4段目は 0.1uF では大きすぎることが分かり、これの容量を下げてみたところ、ピークは完全ではないものの収まったのです。

サイン波による周波数レスポンスを取り直すと、このようなグラフを示しました。
十分とは言えません。
しかし、念のためと思い、弐號機のホワイトノイズを入力し Phase Shifter の出力をPCに取り込んで簡易の FFT を見たところ、8 stage ポジションで4つのディップを確認することが出来ます。

これにより、動作に問題ないと考え、fix としました。
ピークについては、コンデンサの容量を追い込んでいけば、抑えられると思われます。

なお、この Phase Shifter の音は、sound cloud において確認することが出来ます。



終わり。