FET差動アンプを使ったPower Amplifire の製作(3)

このアンプでは、Loudness補正を行うことが出来ます。
特に安価なアンプではラウドネスコントロールが付加されていますが、通常はオンーオフのみで回路的には音量調節用可変抵抗器(VR)の中点を利用しています。
この回路では、これをVRの位置とは関係なく補正できるようにしました。
また必然的に入力インピーダンスが下がりますので、バッファとしてオペアンプOPA2604で受けています。
このOPA2604によるバッファは、出力電流の増強を行っています。
また、帰還回路と入力にコンデンサを挿入し、ACアンプ構成にしています。
これは前段に直流を出力しないアンプがないことを想定してのことです。
斯様なことは、現代ではまず考えられ難いとは思いますが、多くのアンプでは出力コンデンサを有していないものが多く、オフセットやドリフトが生じていることも考えられます。
よって、疑うことも重要と考え、挿入することにしました。

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パワーアンプ本体の回路です。
未だ未検証のため、細部の定数が変更になる可能性もあります。
初段にFETを使い、2段目にもトランジスタによる差動増幅回路を採用しています。
このような使い方は、近代アンプでは常套的な方法で、特別なものではありません。
殊更に「FET式」などと謳う必要もありません。
DCアンプ構成とするなら、初段には必然的にFETを採用することになります。
初段FET差動回路には定電流回路を採用しています。
2段目もトランジスタによる差動増幅回路を採用しています。
通常はこの2段目の片方から出力を取り出す「アンバランス」型となります。
本機では、両方から出力を取り出す「バランス」型とし、出力のMOS-FETによるBTL接続を構成しています。
この回路は、先にも述べたように無線と実験誌での作例とネット上における作例の各々1例があるだけです。
文献を探してみると、テキサスインスツルメンツ社のアプリケーションノートに「完全差動回路」として紹介されていました。
但し、テキサスの文献では、自社のICに関する情報が主体であり、完全差動型の具体的な回路例までは示されていません。

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今回は通常のパワーアンプ回路の延長線上と考えて設計しました。
特徴は、NFBの掛け方にもあります。
出力は2系統あるわけですが、片方は通常のNFBと同様です。
もう一方は、信号入力側に掛けています。
このまま同一値でNFBを掛けると、増幅率に差異が生じてしまいます。
何故なら、正側の利得はAv=(1+(18k / 1k))となりますが、もう一方はAv=(18k / 910)で計算されるからです。
つまり「1」の分を補正しなくてはならないのです。
そこで、入力抵抗910Ωが意味が出てきます。
すると、ここで困った問題が生じてしまいました。
今度は前段VRの合成抵抗が低くなってしまいます。
そこで、パワーアンプ本体の前段に定電流回路+ブートストラップが付いたエミッタフォロアを付加することにしました。
このエミッタフォロアは、黒田氏のものを基礎として手持ちのトランジスタと電源電圧に合わせた仕様にしています。
以上がアンプ本体の回路となります。

以下、製作篇につづく