ノイズジェネレータに関する若干の考察

Noise Generator

ミュージック・シンセサイザにおけるノイズジェネレータは、音源波形としてだけではなく、サンプル&ホールドを経由しVCOを周波数変調させることによりランダムノートを発生させたり、VCFのカットオフフリケンシーを変調することによるグロウルを行ったりすることに使われる。
 ノイズの発生方法は、これまでの作例で最も多いのが、トランジスタを逆さまに使うブレイクダウン方式です。
実際の製品にも数多く採用されています。
しかし、これはノイズの発生量が定量ではなく、品種だけでなくロット、更には個体差によってもバラつきが生じ、一定の振幅を得るには選別が不可欠で、一見アマチュア向きであるように思えますがアマチュア向きではありません。
しかも、選別のために逆接続されブレイクダウンしたトランジスタは、回復不能なダメージを負うことになり、通常のトランジスタとしての転用も不可能になります。
更に、ノイズの発生量が一定ではないので、次段の増幅回路の増幅率の幅を大きくしなければなりません。
 そこで考えられたのが、シフトレジスタを利用したM系列疑似ランダムノイズです。
実際の製品では、1チップに納められたICを使用したものがmoogで採用され、シフトレジスタを使ったものとしてMaplineのシンセサイザなどで採用されています。
また、1チップマイコンであるPICを使用してプログラムで実現した例もあります。

 今回、本製作では、第3の方法を採用することにしました。
その大きなヒントは、1970年代のTV番組で、冨田勲氏がFM放送波の局間ノイズが理想的なノイズであるとの見解を示され、実際に使用されていることにあります。
 実は、この方式の場合、受信周波数はVHF帯(FM商用放送)でなくても良く、中波放送帯(BC帯・MW帯)でも短波でも構いません。
アンテナ回路は、今回に限っては放送受信のために存在するのではありませんので不要であり、タンク回路も意味を持ちません。
受信機としての感度は極力下げる必要があります。
その上で、スーパーヘテロダイン方式の受信機の場合では中間周波増幅回路以下FM復調回路が生きていることが重要です。
勿論、ストレート方式でも同様のことが言えます。
 手元に、過去においてダイソーから発売された100円FMラジオがありましたので、これを使用することにします。
 使用するにあたって、不要な部品を除去しておきます。
このラジオは、イアホンのリードをアンテナ線として利用しています。
このため、イアホンには通常のAF出力だけでなくLが接続されています。
これは不要ですので取り去ります。
また、ノイズ除去の働きがあるミューティング回路も使いませんから部品を除去しておきます。
出力とアースとの間にあるコンデンサも、これがあると発音されるノイズはピンクノイズになってしまいますので除去しておきます。
電源は3Vですので、アンプ部を乗せているプリント基板から簡易的にツェナーダイオードで生成した3Vを供給します。
 実際に製作した結果では、オペアンプ部で40dBの利得を持たせましたが、少々ゲインが足りないようです。
1段で稼ぐのには無理も生じる可能性もあります。
実際、誘導ノイズを拾ってしまいます。
2段目で6~9dB程度のゲインを持たせると良いでしょう。13dB程度のゲインを持たせました。 20dBとし、最終的に総合で60dBの利得を持たせましたが、これは多すぎたようです。

 今回は、100円FMラジオを使用しましたが、FMラジオ用ICはいくらでも存在します。
手に入るICで十分実用化できるものでしょう。
また、内蔵させるだけでなくノイズ発生部を外付けとし、パッチケーブルで接続するのもひとつの方法です。
その場合、ラジオ側の改造が必要ですが、場合によってはハイパスフィルターを通過させることでホワイトノイズを生成できる場合もあります。