Voltage Controlled Phase Shifter の製作(その2)

APF の計算

APF の回路が決まりましたので、各定数を求めます。
ここで、参考にした書籍に誤りがあることに気付かずに計算を進めてしまいました。

これが後々、大きな迷路へと誘うことになります。
計算は、excel で行っています。
コアとなる回路が確定していますから、全体の回路を纏めます。
結果、このようになりました。

ここで、大きな誤りが発生しています。
自分がこれから作ろうとしている回路を理解していないため、何度もあったチェックの機会を見逃してしまっています。
これらのミスは、更に他のミスを呼び込むことにもなってしまいます。

プリント基板の作成

実際に製作へと進みます。


実装密度は、フォトカプラが16個あるため、リード部品を使用している割に高くなっています。

計測

オシロスコープなどで、波形をチェックしていきます。
LFOを内蔵させていますので、その矩形波を信号入力に入れ、波形を観測すると、確かに波形は様々な変化を示します。
一見すると、完成したかに思えました。

しかし、各部の波形を観測していくと 8 stage目に出力がない、オペアンプが異常発熱しているなど、多くの不具合が見られます。
これらは、結局、プリント基板のパターン切れ・配線漏れなどが原因で、時間が掛かったものの解決されます。

実際問題として、これからが大変なことになりました。
そして、腎臓結石により入院・手術ということになり、作業の中断を余儀なくされます。

(続く)

Voltage Controlled Phase Shifter の製作(その1)

2016年11月19日に行われた第16回アナログシンセ・ビルダーズ・サミットへの参加前後、Voltage Controlled High Pass Filter、CV/GATE Buffer、Echo、Fixed Filter Bank を製作し、更に Phase Shifter を製作しました。
ここでは、実際の製作順ではありませんが、Phase Shifter の製作について、先にまとめておきます。

回路の選定

フェイズシフタについては、多くの作例もありますのでそちらを参照してください。
特に 武田氏によるweb page は、参考になります。
殆ど全ての作例で採用されているのは、1次の微分型 APF(All Pass Filter)です。
私も、当初は1次で考えていました。
当初考えたものは、下図のものです。


これは、1セル単位では、トランジスタ1石で構成された恐らく最も簡単な回路になるでしょう。
moog のモジュラシステムにある bode frequency shifter で使用されていますが、位相のシフトは固定です。
オペアンプを使用して同等の回路を構成しようとすると、オペアンプを2個必要とします。
トランジスタを使用した場合、スペースファクタが最も小さくなると思われます。
初期の段階では、この回路と次に掲げる回路とを比較しました。


この回路は、非常に作例も多い実績あるものです。
近著の岩上氏、伝説の山下氏も電圧制御抵抗素子(VCR)に違いがあるものの(岩上氏は FET、山下氏はアナログフォトカプラ)、同等の回路を構成しています。
前述の武田氏も web page で公開されている回路はこれで、VCR には LED + CDS を使用しています。
また、実際に市場に出回っている製品でも、採用している回路はほぼこれです。
それだけに、資料も潤沢です。
先のトランジスタ回路と比較しこれに決めかけていましたが、ある方からの一言で一転、2次 APF に挑戦することにしました。


2次 APF です。
上記2種類と違うのは、セルを構成するCRの多さであり、VCR を必要とするのが4箇所になっていることです。
2次なのですから、CRが増えるのは当たり前のことですが、オペアンプは1個で済みます。
市販のギター用エフェクタでは、1次4段から6段が一般的で、スタジオ機材では、6〜12段になっているようです。
今回は、この APF を基に、同じ回路を4段シリーズにします。
1次の8段に相当します。
これに、4段・6段目からもタップを出し、4・6・8段を選択できるようにスイッチを設けました。

(続く)

電子工作 オーディオ用DACの製作(その2)

現在、自宅で使用しているCDプレイヤーはDENONのDCD-1650REです。
この機種に対しては、何ら不満はありません。
寧ろ、気に入っています。
今回の製作は、別室の3台のPCの外付けDACとして使用することを前提にしています。
また、時にはDCD-1650REをトランスポートとして使用することも念頭に置きます。
そこで、S/PDIF入力は3〜4系統で、切替可能にします。
DACは、同期型として、マイコンによる制御は行いません。
従って、ハードウェア制御ということになります。

DACの出力は、電圧出力と電流出力が存在します。
回路としては、電圧出力のものが最も簡単に構成できます。
しかし、それは面白味に欠けるかもしれません。
そこで、今回は、電流出力のタイプを使用することにしました。
S/PDIF入力部は、DACには含まれていませんので、DAI用のICを使用することにします。

電子工作 オーディオ用 DAC の製作(その1)

Windowsを悪名高い 8.1 から 10 にバージョンアップし、ふとオーディオ系の設定を見ていました。
サウンドカードの設定項目に、192KHz24bitなどが増えていて、選択できるようになっています。
今まで自分で制作した WAVE File を再生してみると、聞きやすい音になります。
その音が良いか悪いかと言うと、多分に好みが入りますので、一概に断言はできません。
そこで、現用オーディオシステムも音楽制作用PCのサウンドカードも不満はありませんが、DACを製作することにしました。

製作にあたり、以下の点について、配慮します。

  1. 手持ちの部品を活用すること
  2. 音が良いこと(主観による)
  3. 手軽に組めること
  4. 入手しやすい部品を使用すること

手持ちの部品は、CRなどの受動部品だけでなく、OP Ampやトランジスタ、FETなども含みます。
OP Amp は、現在、入手性などを考え、FET入力のものではOPA2604、OPA2134、MUSE01、トランジスタ入力のものではNE5534、NJM2114、LM4562のいずれかを候補にしています。
また、使用OP Ampは、採用するDAC ICにも影響されます。

[電子工作] 5 in stereo Mixer の製作(4)

出来上がった Mixer の特性を測定してみました。

  • チャンネルセパレーション

L→R -67.6dB

87.4dB

  • THD+N(高調波歪率)

L 0.0077%
R 0.0055%

  • 残留雑音

0.0637mV

  • 周波数帯域

ここで、低域に行くにしたがって利得が上がっていることに気が付きました。
ある方よりツイッターでご指摘を頂きましたので、全体的な見直しを行いました。

1段目の利得を下げ(NF抵抗の100KΩに39KΩを並列に接続)、更に22pFのディップドマイカを接続しました。
また、低域のピークを抑えるために、2段目入力部に入れてあった1μFのカップリングコンデンサを短絡しました。
その結果得られた特性が上図です。
位相は、20KHzから変化を始めて、80KHz付近で90度の位相差になりました。

  • 出力対高調波歪率


これで完了とします。